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PAGE | 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 | ADMIN | WRITE 2008.10.31 Fri 23:39:10 2008年10月30日正確には、29日と30日の出来事。
■treat and treat!
能力者として開花したことを機に、従兄の後を追うかのように銀誓館学園へ 琴羽が入学(正確には転校というべきか)をしてから早数日。 珍しくも自分の元を訪ねてきたその従兄の第一声は、とても意外なものだった。 「お菓子?薙己ちゃんが、なんでまた」 「ハロウィンだから……らしい」 「らしい、って」 薙己は渋い表情を隠そうともしないまま、結社でやるらしいからとぼそりと呟く。 どうやら、本人は余り乗り気ではないらしい。 「興味無いんなら、参加しなきゃ良いのに」 「それで済むならそうしてる」 「……薙己ちゃんて、割と付き合い良いとこあるよね」 「あそこの人間が強引なだけだ……」 「ふぅん……」 それでも、と琴羽は思う。 何だかんだといって、この従兄は昔から人の頼みを余り断らない人間だ。 根っ子がイイヒト、なんて言うときっと仏頂面で否定するから、本人に面と向かって 言ったことは無いけれど。 「で、何でわざわざあたしのとこまで来たの?買い出しの荷物持ちならお断りよ?」 「誰がそんなもの頼むか……」 「じゃあ、何。はっきりしないなぁもう」 まさかハロウィンの話を愚痴る為だけに来たわけでもあるまいし、と琴羽は 腰に手を当てて頭一つほど上にある薙己の顔を睨みつける。 「……お前、変な菓子とか、知らないか……?」 「……は?」 「もしくは食べた人間が倒れるようなパイでも、構わないと言えば構わないが……」 「あ、あの、薙己ちゃん?」 大真面目な顔で、言うに事欠いて変なお菓子と食べた人が倒れるパイ。 「普通、パイで人は倒れないよ……?」 「実際に倒れてる」 「………………あ、そう、なんだ……」 薙己の所属するその結社がどのようなものなのか琴羽は全く知らないが、その話を 聞くだけでも何やら大変な場所であることは容易に窺える。 だが、それで薙己の言わんとすることは何となく理解出来た。 「んと、つまり薙己ちゃんは、そういう変な威力を持ったお菓子をハロウィンで 配りたいってことなの?」 「そういう主旨のものを何か用意しておかないと、呑まれる気がするからな……」 それは最早楽しいハロウィンの図から程遠くは無いだろうか。 けれど何だかんだと言いながら、イベント事に余り興味を示さない従兄が積極的に 関わろうとしているのだ。 これは協力して然るべきだろう。 「うーん……。お薦めしたいのは一つあるけど、匂いでバレそうなのよねー……」 「匂い?」 「そういうの、別に気にしない?それなら家に大量にストックあるから、いくつか あげても良いんだけど」 「……何なんだ、それ」 「あたしが愛用してるのど飴」 瞬間、薙己の目線が険しくなる。 「ちょ、言っとくけどその辺の無駄に甘ったるいのど飴なんかよりも断然効くん だからね!それに、味は慣れたら気にならないし……」 「……何も……言ってない」 「言ってた!目が『お前何食ってんだ』って言ってた!良いわ、薙己ちゃんの 意見なんて聞いてやらない。明日一箱押し付けるから首洗って待ってなさい!」 「一箱……?」 琴羽の口から飛び出た予想外の単位に、薙己の眉間の皺が一層深まる。 「10粒入り10本で個数的には100個!ハロウィンで配り切れなかったら、残りは 薙己ちゃんが責任持ってきちんと食べるのよ!?」 「……余ったら、返……」 「返品は受け付けません!!」 すっかりと臍を曲げてしまった琴羽を、最早宥める術は無い。 薙己は小さく溜息を吐くと、わかったと了承の意を示した。 翌日薙己の元に押し付けられたのは、予告通りの箱入り喉飴と、やや歪な形をした 綺麗な狐色のクッキー。 「……何だ、これ」 「薙己ちゃんの結社の人がハロウィンにその飴しかもらえないのは、流石に 可哀想かなぁって」 「……食えるのか?」 「失礼よ、薙己ちゃん。あたしこれでもお菓子作り得意なんだから」 琴羽は腰に手を当てて頭一つほど上にある薙己の顔を睨みつける。 昨日と同じような風景の中でふと感じた違和感は、琴羽の手元にもう一つ存在する クッキーが入った小さな袋。 「それは?」 「こっちはべーつ」 後輩の子にあげるの、とご機嫌な様子で琴羽はにこにこと笑う。 どうやら入学して早々にお気に入りを見つけたらしい。 「じゃあ頑張って……っていうのも変か。ハロウィン、楽しんでね」 ひらひらと手を振ると、琴羽は自分のキャンパスへと戻っていった。 「楽しむ……な……」 両腕の中の荷物に視線を落とし、薙己は小さく呟いた。 それならば用意してもらったものだけでなく、自分でも何か選んでみるべきだろうか。 「飴で……良いか」 どうせなら、そう。苺の飴と、桃の飴でも。 楽しく騒がしいハロウィンがやってくるまで、後一日。 PR CommentsComment Form |